【前回までのおはなし】
甲賀三郎『ニッケルの文鎮』の作品読解ご依頼を受け
準備する中で
ちょこっと気になったセリフがありました
物語の語り手:八重ちゃんの
「ええ、こりゃ漢語よ」です
テーマとも無関係そうな
ここがわからなくてもどーってことなさそうな一言なのです
が
これまた読解ご依頼で
岡本かの子『金魚繚乱』の準備をしております時に
先のセリフについて
2つほど 腑に落ちたところがあったのでございますね
一つは
『金魚繚乱』
漢語がけっこう出てくる文章でございまして
つまり
本の中の言葉と
日常会話での言葉が
今よりも明確に区別があったのでは?
と言った推察
からの
『ニッケルの文鎮』が書かれた時代と
当時の読者がリンクしていると申しますか
「そうそう!そうよね!」的なアイテムでは?
八重ちゃんのセリフに当時の読者が呼応できていた
と感じたワケでございます
物語への親密度がぐっと高まりますし
フィクションですが
物語にリアリティを感じることができますね
ことに推理小説だと
事件のリアリティさ と言うのが大切になってきますし
で
もう一つ「へ~」と思ったことがございまして
それは?
【宗教研究家である岡本かの子の文言は見事に咀嚼されている】
今でこそ岡本かの子と言えば小説家
なのですが
当時
仏教研究家として非常に著名な方だったんですね
なぜ仏教にのめりこんだか?
それは かの有名な
夫と三人の愛人との同居が
大きな原因なのですが
ま これは次の機会におはなしするとして
で かの子の仏教講話がたいへんな人気で
ラジオや地方講演にひっぱりだこだったそうです
で
『仏教読本』と言う岡本かの子が記した著作があるのですが
国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できますよぉ
これが たいへんに読みやすい!わかりやすい!
速記本とは記載されていませんが
おそらく 講演の文言をかなり忠実に起こしたものではないか?
と思いますね
つまり
会話としての言葉なのですね
聴衆の理解のしやすさ
そこを最優先におはなしなさったのでしょう
これ 朗読と相通ずるところでございますね
辞書にも掲載されていないようなムズカシイ言葉を
あふれるがごとく使いこなす反面
ごく平坦な文言で事の深遠を語ることもできる
おそるべし!岡本かの子!
でございますね
と こんな資料がありました
【ラジオ放送開始初期における漢語の扱い】
出たッ!「漢語」
これは ごく簡単に申しますと
ラジオ放送が始まり
いろいろな方が講話をなさるのですが
言葉が難しすぎて
たぶん ありがたいおはなしなんだろうが
よーわからん
と言う聴衆からのご指摘が多々あったと言うことなのですね
で
極力
耳だけで理解できる言葉
それを資料では「耳のコトバ」と表記しています
を 使いましょう
と言うことになりましたそうです
岡本かの子『仏教読本』は昭和9年の出版です
ラジオ放送が始まりましたのが大正14年
かの子さんは こう言ったことも熟慮して
広く多くの方におはなしをなさったやも知れません
【再び『ニッケルの文鎮』】
『ニッケルの文鎮』が出版されましたのが大正15年
ラジオ放送が始まりましたのがその前年の大正14年
つまり作者:甲賀三郎は
前記の世情を 物語に余すことなく盛り込んでいったのでは?
例えば
作品の冒頭に
大泥棒「無電小僧(ラジオこぞう)」
と言うのが出てきます
実はこの大泥棒 物語の重要人物であーる
無電と書いて「ラジオ」なんですね 知らなんだ…
からの
八重ちゃんの「漢語よ」の「漢語」
などなど
その当時の「今」を写し取った物語だったのでしょう
また
女性解放運動がおこり
「職業婦人」と言う言葉も生まれました
つまり
八重ちゃんは
時代を象徴する女性
新しい時代の女性像として
甲賀三郎は描いたのかも知れませんね
そう考えると
八重ちゃんのカオスな感じが
少し理解できる気がいたしますです
下記画像は講座のために作成いたしました1頁です
15年と言う短い時代であった大正
でも いろんなことが怒涛の如く ですね

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