さーかす書房 拍手のための朗読再考

リアル朗読会を成功に導く戦略

二月 おススメ朗読選書「鬼」

朗読演目

どんな風にお選びになっていますか?

・これ好き!

・これ読みたい!

もちろん これはごく基本的な選書基準でございますね

好きこそものの上手なれ なんて申しますし

練習の気合がちがってきますものね

でも 朗読演目の選書の場合

自分目線だけだと

チョット不十分です

特にリアル朗読会の場合は

お客様視点を加えてみましょう

それにはこんな方法がございますよ

 

【テーマ:季節】

広く多くの方が興味をもってくださるであろうテーマ

その一つが「季節」でしょうか

今では 春・秋が短く 

何と申しますか

一年が

熱すぎる夏へと加速する期間と

冷めやらぬ余熱期間

と言った感じですが…

それでも(それだからこそ?)

季節の移ろいは

誰もが心を動かされるものがございますね

ここを狙ってまいりましょう

朗読会開催時期の季節にピッタリと合致した選書を心がけてみましょう

と言うことで

二月のお題は?

 

【節分⇒鬼】

季節の伝統的な行事は

朗読演目のための選書の大きなヒントです

二月の行事と言うといくつかございますが

今回は節分にちなみまして

「鬼」をテーマに選書してみましょう

 

【鬼のおはなし数々あれど】

日本の民話には多くの鬼が登場いたしますね

おそろしかったり

ちょっとおどけていたり

ですが

自死した鬼

と言うのはあまり類の見ない物語ではないでしょうか

今回ご紹介いたしますのは…

 

【「鬼の子小綱(おにのこ こづな)」】

東北に伝わる民話でございますね

民話と言うとお古いお物語でございますから

ほとんどが著作権フリー作品!

では 実はございません

再話や編集した方の著作権がしっかり残っておりますので

案外 気楽に使える(朗読できる)書籍が少ないのでございますね

私はこの物語を絵本で初めて知りました

絵本もね がっちり著作権が残っております

なので 絵本読み聞かせの会は

ほとんどが無料での開催なのですね

はなしがそれましたが…

絵本で読みまして

これは実に良いおはなし!

と感じ入り

なんとか著作権フリー作品でないものかと

こんな時は 国立国会図書館デジタルコレクションです

朗読にちょうどよいストーリー展開と文言で

もちろん「保存期間満了」

つまり著作権フリーです

すばらしい作品を見つけることができましたよ

昭和2年に郷土研究社より出版された作品です

 

【物語のあらすじ】

一人の美しい娘が鬼にさらわれた

父親は嘆き悲しみ

あとのことを妻に任せ

娘を探しに山深く捜し歩く

木々の枝に 見覚えのある着物が干してあった

と 岩窟から変わり果てた娘が出て来た

娘には鬼との間に出来た息子が一人いた

美しい男の子であった

名を小綱と言った

父娘は再会を喜び合った

娘は子どもがもう少し大きくなってから

なんとか逃げ出そうとずっと考えていたのだが

父親の顔を見たら

どうにもこうにもここから逃げ出したい

何と言っても夫である鬼が帰って来たら

父親はたちまち食われてしまう

そうすると幼い息子が言った

「すべて おいらに任せろ」

三人は手に手を取って逃げ出した

息子の策がひとつの見どころ山場なんですねぇ

ただ愉快な作戦であるように見えますが

結末を知ると いやはや

この愉快な(チョット下品な)やりようが

深い意味があったことにお気付きになるでしょう

人間の村でやがて成長した小綱の覚悟とは

切なさが胸に迫ってまいりますよ

 

【読み聞かせをするなら】

「鬼の子小綱」は何冊かの絵本になっています

が この物語の真髄を見事に描いているのは

『おにの子こづな』岩崎書店

松居直:作 安藤徳香:絵

ではないでしょうか?

ただ残念なことにただいま品切れ状態

新刊書店さんでは購入することは出来ません

図書館で探してみてくださいね

 

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どうぞよろしくお願いいたします

鬼三味線:大津絵 
物語とは関係ありませんがユーモラスな様子が良いなと…
国立国会図書館デジタルコレクションより

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