さーかす書房 拍手のための朗読再考

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第三回さーかす書房朗読会「今昔 幻想と情念」

第三回朗読会「今昔 幻想と情念」を開催しました

今回の演目は『人妻が死後元の姿を現して夫に會つた話』

本日、書房内イベント「第三回朗読会 今昔 幻想と情念」を開催いたしました。

今回取り上げた作品は、『今昔物語』に収められた「人妻が死後元の姿を現して夫に會つた話」。明治時代の著名な国文学者・島津久基博士による口語訳作品です。

古典文学と聞くと難しい印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、優れた口語訳によって物語は驚くほど生き生きとよみがえります。平安の人々の喜びや悲しみが、現代の私たちにも自然に伝わってくるのです。

愛する妻を捨てた男の末路

物語の主人公は、貧しいながらも幸せに暮らしていた若い武士です。

ある日、恩ある人物が遠国の国司として赴任することになり、武士にも同行を勧めます。出世の機会を得た彼は喜んで承諾しますが、一つだけ気がかりがありました。

京に残していく妻の存在です。

若く美しく、気立てもよい妻。二人は貧しくとも深く愛し合っていました。

ところが武士は、旅立ちの直前に資産家の娘と再婚し、新しい妻とそのまま赴任地へ向かいます。

新しい妻の財力によって出世を重ね、豊かな暮らしを手に入れた武士。しかし、歳月が流れ、生活が落ち着くにつれて、彼の胸には京に残した元妻への思いが募っていきます。

やがて任期を終え、京へ帰還した武士は、真っ先に元妻の住んでいた家へ向かいます。

そこに待っていたものとは――。

幽霊噺でありながら、幽霊噺ではない

この作品は、江戸時代の大作家・上田秋成の名作『雨月物語』の一編「浅茅が宿」の元になった物語として知られています。

細かな違いはあるものの、両作品には大きな共通点があります。

それは、妻たちが恨みを晴らすために現れるのではないということです。

彼女たちはただ、もう一度夫に会いたかった。

それだけなのです。

昔のままの美しい姿で現れ、優しく微笑み、夫を迎える。

裏切られ、捨てられながらも、恨み言ひとつ口にしない。

だからこそ、この物語は恐ろしい怪談としてではなく、人の情の深さと哀しさを描いた作品として胸に迫ります。

朗読で伝えたかったこと

今回の朗読では、幽霊噺や怪談としての面白さだけを強調するのではなく、人が生きることの辛さや哀しみ、そして愛する人を思い続ける心の切実さを感じていただければと思いながら読みました。

古典作品には、人間の本質が描かれています。

千年近い時を隔ててもなお私たちの心を揺さぶるのは、そのためなのかもしれません。

いつか『浅茅が宿』も

今回の朗読を終えて、『浅茅が宿』(雨月物語)も朗読会で是非ご披露したいと思いました。

もちろん、作品の魅力を存分に味わえる優れた口語訳で。

今昔物語と雨月物語、二つの作品を聴き比べていただくのも興味深い体験になることでしょう。

ご来場ありがとうございました

毎月月末に開催している書房朗読会ですが、おかげさまで回を重ねるごとにお客様が増え、リピーターとして足を運んでくださる方もいらっしゃいます。

本当にありがたいことです。心より感謝申し上げます。

今年いっぱいは参加無料、お申し込みも不要です。どうぞお気軽に直接書房へお越しください。

皆さまからいただく拍手やお言葉を励みに、これからも一回一回を大切に務めてまいります。

次回も、たくさんのご来場を心よりお待ちしております。

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